血尿
血尿とは尿に赤血球が混ざった状態です。腎臓、尿管、膀胱、前立腺(男のみ)、尿道のいずれかの場所から出血していると考えられます。しかし一口に血尿と言っても様々な状況があります。
ここでは外来診療でよく見受けられる状況をもとに血尿の診断・治療についてまとめてみました
1.健康診断や人間ドックで血尿を指摘されました。2次検査ではどんなことを行いますか?
日常診療で最も多い相談がこれです。健診の結果が返ってきたら、尿潜血陽性でC判定・・・あまり気持ちの良いものではありません。
このように尿検査ではじめて発見される血尿を顕微鏡的血尿と呼びますが、実際に治療や経過観察が必要な疾患が見つかる頻度は約14%と報告されています。
また最も憂慮される尿路のガン(尿路悪性腫瘍)が見つかる割合は0.5%程度です。
したがって過度の心配は不要ですが2次検査は以下に示すように基本的には体への負担は少ないので、怖がらずに検査を受けましょう。
顕微鏡的血尿の患者様に行う検査
1)尿検査
健診で尿検査が異常でも再検査すると正常化していることはよくあります。
特に女性の場合は採尿の条件によって外陰部の皮膚や粘膜に付着している血液が混入することがあるので、再検査は必須と言えます。
2)超音波検査
腎臓および腎臓周囲の血管、前立腺、膀胱の異常の有無を検索します。なお血尿の2次検査では膀胱に尿が十分に溜まった状態で検査する必要があります。
健診や人間ドックでの超音波検査では膀胱や前立腺までは十分に観察していないことがあるので注意が必要です。
3)尿細胞診
尿中に混入する細胞を調べる検査です。尿路悪性腫瘍では癌細胞が検出されることがあります。
4)状況に応じて追加する検査
■血液検査:健診で行っていない場合
■CT検査:超音波検査で判断が難しい病変が見つかった場合など
■膀胱ファイバースコープ:血尿の程度が強い場合など
2.目で見て明らかに赤い尿が出ました。どのような病気が考えられますか?
肉眼的血尿です。これについては痛み・発熱などの症状を伴うものと血尿以外の症状が何もないものとに分けて診断を進めます。
初めは顕微鏡的血尿と同様に超音波など体に負担の少ない検査を行いますが、特にガンが疑われる場合はCTや膀胱ファイバースコープなどの踏み込んだ検査が必要になります
1)痛みや発熱を伴う血尿
最も多いのは尿路結石や尿路感染症です。頻度は低くなりますがガンの可能性もあります。日常診療で最も多く認められるのは尿管結石症と女性の膀胱炎です。
■排尿時の痛み→膀胱炎、前立腺炎、膀胱結石、膀胱がん、前立腺がん など
■背中や脇腹の痛み→腎・尿管結石、腎盂腎炎(発熱もあり)、先天性水腎症、腎臓がん など
2)痛みや発熱のない血尿
トイレに行ったら何の前触れもなく真っ赤な尿が・・・これを無症候性肉眼的血尿と言います。この場合はガンを念頭に置いた検査が必要となります。
特に膀胱がんは9割近くの患者さんで無症候性肉眼的血尿が初発症状となります。またCTや内視鏡検査などの精査をしても原因が特定できない血尿もあります。
この場合は最終的には腎臓から出血する可能性が高いとの判断から、特発性腎出血という診断となります。
予想される疾患を出血部位別にみると、
■腎臓→腎がん、腎盂がん、腎結石、腎動静脈奇形、特発性腎出血、ナットクラッカー症候群
■尿管→尿管がん、尿管結石
■膀胱→膀胱がん、膀胱結石
■前立腺→前立腺肥大症、前立腺がん といったところになります
※当院で行う膀胱尿道ファイバースコープ(軟性膀胱鏡)検査について
当院の膀胱鏡検査は痛みの少ない電子ファイバースコープを用いています。
従来型の硬性鏡と呼ばれる金属製の膀胱鏡は特に男性の場合は検査時の苦痛が強いことが問題でした。
オリンパス社との共同で軟らかい膀胱ファイバースコープを開発したのが私どもの母校・筑波大学泌尿器科の大先輩である
石川悟先生です(現在、茨城県日立市・石川クリニック院長)
その影響で私どもも新人研修医の時代から膀胱ファイバースコープに慣れ親しんでおり、膀胱内の観察のみならず、逆行性腎盂尿管造影、尿管ステントカテーテルの留置・交換などもファイバースコープを用いた痛みの少ない方法で行うことができます。
3.血尿だけでなく、蛋白尿も同時に指摘されました
蛋白尿を伴う血尿では糸球体腎炎、IgA腎症などの腎実質性疾患の検索が必要となります。状況に応じて腎臓内科専門医をご紹介しています。
なお、膀胱炎などの尿路感染症で尿中に白血球が多数混入している場合は、白血球によって尿蛋白が陽性に出ることがあります。
この場合、感染症の治療を行えば蛋白尿は消失します。
4.朝起きたらパンツに血が付いていました。これって血尿ですか?
5.何年も前から尿潜血を指摘されているので2次検査は不要でしょうか?
冒頭でも述べましたが、尿潜血で2次検査をしても8割以上の患者さんには異常が見つからないので、良性血尿として次年度の健診までは経過観察となります。
当然ながら10年、20年と毎年のように尿潜血で引っ掛かる方が出てくるわけですが、良性血尿の患者さんが将来的に「尿に赤血球が混ざる重い病気」に罹らないという保障はありません。
具体的に何年おきに精査をすれば良いかという基準はないのですが、健診での血尿の程度なども参考にしながら、超音波や尿細胞診など体に負担のかからない検査は継続しておくのが無難です。